🎻 実在のアンナ•マリアについて

  300年前のイタリア、ヴェネチアで活躍した作曲家アントニオ•ヴィヴァルディ

 

 彼は孤児院“ピエタ”でバイオリンや合奏の指導をしていました。

 またここの合奏団のために定期的に作曲することも仕事のひとつでした。

 

 やがて「ピエタの娘たち」と名付けられた少女合奏団は素晴らしい演奏を披露するようになりました。

 毎週開かれる演奏会は評判になり、観光客の楽しみにまでなりました。「ヴェネチアを訪れたなら、ぜひピエタの演奏を聴くといい」という言葉が残されているほどです。

 

 アンナ•マリアは幼い頃からピエタで育ちました。バイオリン、チェロ、ヴィオラ•ダモーレなどの楽器を学び、中でもバイオリンの名手になりました。

 ヴィヴァルディはアンナ•マリアのために愛情に溢れた多くの協奏曲を作曲しました。

 

 ヴィヴァルディはピエタ以外でも劇場でのオペラ上演にも力を注ぎ、貴族の依頼や教会のイベントなど様々な機会のために作曲をしました。ですから多くの音楽家とも交流があったと思われます。

 しかしヴィヴァルディにとって、アンナ•マリアほど信頼がおける音楽家はいなかったと思います。どれほどの信頼関係で結ばれていたかは残された楽譜を読み解けばわかってきます。ヴィヴァルディはアンナ•マリアの演奏によって自身の作品の素晴らしさが表現できたのです。またアンナ•マリアにとってはヴィヴァルディの作品が自身の演奏の上での最良の作品だったのです。

 

 ピエタの合奏団のために作曲された作品は、300年の時を越えてまるで現代の子どもたちのために書かれた曲のようにまったく色あせることなく輝き続けています。

 

 

参考書籍

ピエタ

大島真寿美